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Channel: 勢蔵の世界
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江戸のリサイクル

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200年も300年も前の話だから、職業も現代にないものがたくさんある。モノを修理、修繕する専門の職業が実にバラエティーに富んでいて面白い。
 
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江戸時代から昭和期にかけての鍋・釜は貴重品であった。ひびや穴が開いたとしても容易に捨てたりせず、補修を繰り返しながら使っていた。これを請け負う修理業者が「鋳掛屋」(いかけや)である。町中や村々を呼び巡り、声をかけられたら仕事をした。
大阪弁では「夫婦仲良く外出する」という意味になっていた。江戸時代、上方では夫婦のいかけ屋が多かったからだという。「今日は徳さんとこ、芝居行くンかいな。いかけ屋やなあ」という言い方をしていた。↑上の画像は、明治時代の鋳掛屋。
 
 「焼継屋」(やきつぎや)は、割れた茶碗や瀬戸物類を接着して再生する。うるしで接着したり、白玉粉(鉛入り)と呼ばれるもので接着し加熱して焼き直した。落語「両国百景」では、「焼継屋」が持ち運びのできる小さな炉を使って焼継ぎの商いをする様子が描写されていますが、庶民が使う安い茶碗ではなく、伊万里の染付といった高価なものの再利用であろう。
 
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 昔の鏡は青銅の表面に水銀メッキをしたにすぎず、使っているうちに曇ってきて見にくくなりますので、女性たちはメッキをしなおす職人「鏡研ぎ」が巡回してくるのを待って研ぎ直した。
 鏡研ぎは、まず、表面を細かい砥石で研ぎ、水銀、きみょうばん、ざくろや梅酢などの有機酸をまぜたものを塗って藁でこすりつければメッキができて、新品同様に使えるようになったという。
 ちなみに湯屋の入り口を石榴口(ざくろぐち)という。かがんで入る、つまり「屈(かがみ)入る」に、ざくろを使っての「鏡鋳る」を掛けたもの。
 
「朴歯屋」(ほうばや)は、すり減った下駄の歯を入れ替えてくれる。鼻緒のすげ替えもしてくれる。ついでに新しい下駄も売っていた。
 「提灯の張り替え屋」「傘の張り替え屋」は、張り替えはもちろん屋号を書き込んでもくれる。
傘は高価ですから古傘買いがいたほど。「古傘にいつも越後が二、三本」という江戸川柳があります。越後というのは駿河町「越後屋呉服店」です。雨が降ると客に屋号入りの傘を貸し出した。それを返さないで使い古して古傘買いに売ったという句です。買いとった古傘は、折れた骨を取り替え、新しい紙に張り替えて再生させた。
 「羅宇屋」(らおや)愛煙家の必需品の煙管(キセル)の修理とニコチンの掃除が専門の職人さん。文政年間の『狂歌煙草百首』によると、煙草を吸わない者は100人中、2~3人とあるから忙しかったであろう。
 「眼鏡屋」「算盤(そろばん)直し」は、修理や調整もするし、販売も兼ねていた。「たがや」は桶の修繕屋。落語「たがや」は昔からの古典だが、今でもよくかかりますね。
 
 いろいろなものを買取る商売も多く存在した。「紙屑買い」の集めた紙は、すき直して浅草紙として再生された。ねずみ色の浅草紙は落とし紙(便所紙)に使われた。ちなみに「ひやかす」の語源は、浅草山谷の紙すき業者が、紙がひえるまで(紙の繊維が分解するまで)吉原を見物してきたことに由来するという。
 「ろうそくの流れ買い」は溶けた蝋を集めて再生する業者です。
 「献残屋」(けんざんや)は、贈答品を扱う業者で、鰹節、するめや昆布などを買い上げ、また販売したという。早い話が、日持ちのする贈答品のつかい回し。 
 江戸時代の人は、着物を新しくあつらえる場合は、「呉服店」や「太物(ふともの)店」で反物を購入する。呉服は絹もの、太物は木綿ものの意味です。既製のものはなく、この反物を自分で仕立てるか、仕立てに出して着ることになる。しかし、庶民は通常、着物を古着屋で買った。恥ずかしいことではなく、当たり前のことだった。古着屋は、神田川沿いの柳原土手あたりに軒を連ねてあった。柳原土手は有名な古着屋街で、江戸周辺の人々も買いにやって来たという。その他にも、古着屋街は江戸にはたくさんあった。
 
 大人用の着物を古着屋で買って、古くなれば使える部分で子ども用に作り直したり、オシメにした。オシメがとれたら雑巾になり、ボロボロになったらたき付けになり、灰になったら洗濯に、肥料にという具合である。もっとも、作り直す際に出る端切れは「端切れ屋」が買ってくれたし、「灰買い」の業者がいた。
 このようなリサイクルが可能だったのは、一個人や家庭の心がけのレベルでなく、江戸の社会の仕組みがそうなっていたからでしょうね。
参考、HP・クリナップ「江戸散策」
 http://history.blogmura.com/にほんブログ村 歴史ブログ  

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