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Channel: 勢蔵の世界
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根尾谷の桜

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十数年前のことですが、根尾谷の桜を見に行ったことがある。いまだに脳のピクチャライブラリに焼きついています。根尾川に沿った一本道だから、覚悟していたとはいえ、車が進まず閉口した。
淡墨(うすずみ)」という。樹齢1500年といい、長きにわたって咲き続けてきた。花は白く小さい。山腹にあり、遠目には、濃緑の画布に白くハケではいたような美しさがあった。
大正11年に特別天然記念物に指定され、その後何度も、樹勢が衰えたといわれながら、生きながらえてきた。昭和23年に「3年以内に枯死」と文部省から診断されたときは、村人は死刑宣告と受けとった。県下多くの名士がこの名木の枯死を惜しみ、淡墨桜顕彰保存会が設立された。
イメージ 2 当時、老木起死回生の名手として知られた岐阜市の医師・前田利行翁に依頼。前田翁(当時77歳)は、翌年24年3月10日から、数人の人夫を雇い「根つぎ」という起死回生術をやった。老木の根を掘り出し、斜めにこれを切る。若木の山桜の根を同じように切り、老若の根をぴたりと合せ、ボルトで締める。そういう作業を、4月5日まで238本の根にほどこした。古い根は養分を取れない。代わりに若い根が吸い取って、老いた根に注ぎ込んでやるという試みである。何年かたち、老木は息を吹き返した。巨木の中央から若枝がわくように伸び、花を付け始めた。
我々が咲き誇る「淡墨桜」を見ることができるのは、後世にこの美しさを伝えたいとする先人の賜物であり、文化という人間の営みのすばらしさでもある。
 
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