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Channel: 勢蔵の世界
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 隣町の半田市にある「雁宿ホール」は、落語クラブの毎月の例会や催しによく利用している。近くに桜の名所・「雁宿公園」がある。
 東隣の刈谷市には「かりがね小学校」、「雁が音中学校」があり、前をよく通る。こちらは地名ではなく新しく開校したときにかつてこの地で、雁が音をあげていたという伝承が校名の由来だそうで、いいネーミングだと思う。こうして以前より「雁」に縁があるが、私は雁を見たことがない。いや見たことがあるかもしれないが、「あの鳥が雁だ」と、認識したことがない。
 
 「かりがね」(「たずがね」もそうだが)と、その音(ね)をとくに言ったのは、上空を鳴き過ぎるその声に聴き入ったからでしょう。後には、雁・たず(白鳥、鶴など)そのものを現わすようになった。
 
 『デジタル大辞泉』の解説によると
 かりがね 【雁が音/雁金/雁】
 
 ① ガンの鳴く声。また、ガンの別名
 ② ガンを図案化した紋所の名。
 ③ カモ科の鳥。全長約60センチ。全体に暗褐色で足は橙黄色、額が白く、日本には冬鳥としてマガンにまじって少数が飛来。
 
 付け加えさせてもらうと、②の雁金紋は、柴田勝家の家紋で知られています。勇猛なイメージの勝家に、愛らしい雁のデザインは微笑んでしまう。③古歌ではかりがねは雁の別名を指したのだが、現在の動物学では雁の一種に「かりがね」と命名している。
 
 『鴈風呂』という落語があります。海辺に打ち寄せられた木片をたいて風呂をたてる津軽での風習がある。秋の末に渡ってくる雁が、海上で羽を休めるための木を海辺に落としておき、春に再びくわえて帰るといわれ、残った木片は死んだ雁のものであるとして、供養のために諸人を入浴させたという。水戸黄門が聞き役で登場するが、あらすじは長くなるので省きます。この噺を得意にしていた桂米朝師匠のサゲである。
 「雁風呂の講釈をしたおかげで、借金が取れますがな」
 「そらそうや、かりがね(借り金)の話をしたんじゃ」
 
 鶴には松だが、雁には月が似合う。それと城跡である。
 名曲・『荒城の月』の2番です。
 
秋陣営の霜の色
鳴きゆく雁の数見せて
植うる剣に照り沿ひし
昔の光今いづこ
 
 作詞者の土井晩翠が仙台出身だから、仙台市民は青葉城をイメージしたとされているが、彼が語るに会津若松城です。それに滝廉太郎は出身地・竹田市の岡城址を思い浮かべて作曲したのであろう。
 次は三橋美智也が歌う『古城』3番です。作詞者は能登七尾城址を訪れて作った。
 甍(いらか)は青く苔(こけ)むして
 古城よ独り何偲ぶ
 たたずみおれば身にしみて
 ああ 空行く雁の声悲し
『荒城の月』と『古城』、どちらも大好きな歌です。この両歌の雁は、上杉謙信が七尾城を囲んだときに詠んだ詩をふまえているのは明らかですね。有名な『九月十三夜』です。七尾を訪れたときに旅館の箸のカバーに記されていた。
霜満軍営 秋気清
行過雁 月三更
越山併得 能州景
遮莫 家郷憶遠征
「月三更」とは真夜中の月という意。夜を五としその第三。子()の刻。およそ午前零時からの2時間をいう。
 これで終わればいいものを、品位を落とすバレ小噺を一席。その前に、今は使わなくなりましたが、刻み煙草を煙管(きせる)に詰める火皿を含む前部部分を「雁首」(がんくび)と称したことを頭に入れておいてください。

 毎日まいにち、お城のなかにこもったきりじゃ身体によくない、気分も晴れないてぇんで、お姫様は、野行き、今でいうピクニックに出掛けます。お駕籠ン乗って田舎の方へとお出かけンなりまして、小さな湖のほとりでご休憩でございます。すると、渡り鳥が鳴きながら飛び立ちました。お姫様、それを見て
「爺、あれを見やれ、ガンが飛ぶぞ」
「姫様、ガンと申すは下世話の言葉。やんごとなきお方様はカリと呼ばれるがよろしいかと」  「さようか」
さて、爺が一服つけようてぇんで、煙草入れを取り出し、キセルに刻みを詰めまして、スパスパッと煙草を吸います。この灰を、コンコンッとやって落とそうとすると、キセルのガン首がゆるんでおりましたものと見えまして、ポロリと取れた。
「爺、カリ首が落ちた!」
 
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