中学1年生のときに相撲部に入ると、先輩から土俵上での基本として、(腰を落として)右手と右足、左足と左手を一緒に出す動作を教わった。相撲のみならず、日本人は古来より、右手と右足、左足と左手を一緒に出す動作の歩き方、あるいは、同様の走り方をしていて、明治に入って、外国の軍事訓練を取り入れたことから、現在の私たちのような歩き方・走り方になったという。
右手と右足、左足と左手を一緒に出す歩き方を、「ナンバ歩き」と呼ぶそうです。語源は大阪の「難波」ではなく、どうも「難場」からのようです。「難儀な場所」「難儀な道」を意味します。そんな場所では自然と膝の上に同じ側の手をあてて膝と肘を伸ばしながら歩く。
能狂言では、ナンバ歩きは基本的な動作であり、歌舞伎の舞台でも、見得を切ったり威張ったりして歩くときには、ナンバ歩きをする。剣道、柔道、空手や古武術も同じですね。
着物の生活では、腰で帯を締めているために、右手左足を同時に出す現在の歩き方では、腰のところで上半身とか半身がねじれるため、帯がゆるんでしまいます。特に武士は大小の日本刀が邪魔になり着物が絡むため難しい。
私には昔の日本人が、すべてナンバ歩きをしていたとは思えないのですが、めずらしくはなかったでありましょう。もちろん「ナンバ歩き」とは、昔は呼んでなかったと思われる。
重い荷物を背負って山を歩くときには自然にナンバ歩きになります。荷物が重いので自然にムダな動きをしないようにするからです。しかし、軽い荷物のときには、どうしても西洋式の歩き方になってしまう。身体に染み付いてしまっていますね。
テレビで紹介されていましたが、山歩きや階段のときはナンバ歩きにかぎるという。ムダな力を使わないので疲れない歩き方で、足首、ひざ、腰などを傷めることがないという。よって、ナンバ歩きに慣れると山歩きがずっと楽になると紹介していました。
最近では、ナンバ走りが見直され、マラソンに取り入れられているという。昔は、腕をできるだけ前後に大きく振って、ひざが胸に付くぐらい高く上げ、歩幅をできるだけ広くして、かかとから着地する走り方をしていた。その方が早く走ることができると教わった。しかし、現在ではそういう走り方はしない。少し前傾姿勢になって、歩幅は広くとらないで、足をかかとからは着地しない。足の親指の付け根(拇指球)あたりで着地する。よって、靴のかかとが減らない。要するに、足首のバネを利かして走るので骨に衝撃が少なく、足首、ひざ、腰などを痛めることがない。上半身は当然、ムリにひねったりせず、ほとんど力を入れない。左右の腕は前後にムリに動かさない。自然にリズミカルに動かす。だからムダな動きがなく、あまり疲れない。これが現在の正しい走り方なんだそうです。現在の日本のマラソン選手の走り方は、そのように変わっているようです。